変わった野菜を食べてみよう [とろろそばが出来るまで]

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オーナー制度で自然薯を収穫するという夢は叶わなかったものの、格安で美味しそうな自然薯を手に入れられて満足、というところで前回は終わりました。
またしても番外編ではありますが、そのとき購入した初めて見る野菜を手探りで料理して食べてみます。未知の野菜に挑みます。

text by 小川 恭

沢山買ってきた

前回の長柄町道の駅で、新鮮かつ物珍しい野菜たちにつられ財布のひもがユルユルにゆるんでしまった。
とはいえ、値段が非常に安かったので痛手はほとんどなかったのだが。

まあ、テンションがレッドゾーンを振り切って「やっぱり地のモノっていいよね~!」とか言いながら、なんでもかんでも買い物カゴにぶちこもうとする私の手にあるミカンを見て、

「それ、静岡産」

と、同行してくれた友人F君に冷静に指摘され我に返り、「長柄町産」と書いてあるもののみ選択して買ってきたおかげ、とも言える。

もともとの目的であった自然薯以外にも、菜の花、大根、かぼす、と一般スーパーでも見かけるがとてもお買い得だったものと、あと初めて目にする「菊芋」という野菜を買ってきた。

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これがその菊芋です

どっからどう見ても根ショウガにしか見えないのだが…。

一体これはどうやって食べるのだ?
戦時中、日本軍の捕虜になったアメリカ兵が、食料としてゴボウを与えられ、「木の根っこを食事として出すなんて、捕虜虐待だ!」と訴えたというのは(ちょっとうろ覚えなので細かい間違いはお許しいただきたい)有名な話だが、これもそういうたぐいの誤解を受けそうな野菜である。

多分、菊芋を手にして頭に?をいっぱい浮かべている人が沢山いたのだろう、陳列棚の隣にはこんなレシピのコピーが置いてあった。

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あら親切

また、菊芋の袋の中にもレシピや菊芋豆知識、みたいなものが入っていた。

それらの豆知識をまとめると、

・イモと名はついているが、でんぷんを全く含まない
・キク科に属する多年草の植物
・天然のインシュリンを含んでおり、糖尿病から来る合併症を防止できる食物として注目
・不溶性食物繊維の他に、イヌリンという水溶性の食物繊維を含有
・食べるほどに膵臓(すいぞう)機能が改善され、復活する

と、某お昼のTV番組(もう終わってしまったが)でお嬢さん方に紹介したら、一気に菊芋フィーバーが起こってもおかしくないような効用である。

なにも知らずに物珍しさだけで買ってきたが、これはたいしためっけもんだ。
というわけで、いざ食べてみます。

どうやって料理しよう?

これを買ってくるとき、紙のレシピだけでは不安だったので、レジをしてくれた奥様に菊芋のことを聞いてみた。

奥様曰く、味は見た目に反して根ショウガのような辛みなどは一切無く、どちらかといえばゴボウのような味がするとのこと。
奥様一番のおすすめは皮だけむいて丸ごと味噌につけたおつけものだという。また一夜漬けのようにしても美味しいし、天ぷらやキンピラにしてもなかなかイケるらしい。

なんとなく味が見えてきた。ゴボウの感じか…。

今回はこれでいきます

いろいろ考えて、今回は天ぷらにすることにした。

奥様イチオシの味噌漬けも捨てがたかったのだが、あいにく冷蔵庫に眠っていた味噌の量が菊芋を埋め込むだけの厚みがなかったので今回は諦めた。
それを考えると天ぷらって粉と水と油さえあれば美味しく出来るんだから偉大である。

さて、と菊芋を手にとって最初の難関に直面する。

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このでこぼこっぷりはなんだ

形が揃わなかったり曲がったりしている野菜が商品にならないとしてはじかれてしまう現代において、この自由気ままなでこぼこはアバンギャルドな匂いすら感じる。
どんなにタワシでこすっても凹の部分が深すぎて土がまったく落ちない。
私は普段皮むきはほとんどピーラーで済ますのだが、こればっかりはその手段が使えない。

しかたなく株ごとに切り分けて皮をむく。

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透き通るような乳白色

ジャガイモも芽に毒があったりするので、少し厚めに皮をむいて角のようになっているところも削ぎ落とす。すっかり皮をむいてしまうと、確かに芋らしい見た目になる。

これを少し太めの千切りにして、衣をまぶし油でからりと揚げる。

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じゅわー

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出来ました

見た目はこの連載コラムの料理上手、玉置さん堀江さんにはまったく及ばないが、とりあえず天ぷらのいっちょあがり。

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いただきます

私の腕のせいか、中の火の通り具合が若干まちまちだった。しかしそのおかげで火の通り具合別の歯ごたえが分かる。

生に近い部分はシャキシャキとした感じで、ゴボウに近い味、というのがよく分かる。良い意味での「土の味」だ。おそらくアクがもたらす土臭さなのだと思うが、これが根菜類の一番の持ち味だと思う。実際、ゴボウなどはアクを抜こうと水にさらしすぎると水っぽく、香りも無くなりすごーくまずくなる。

また、火が芯まで通った部分は、芋と言いながらも「ほっくり」というのとは違う。
シャッキリ感が少し残ったしんなり、といった感じ。時間の経ったマックのポテト…というとちょっと伝わるだろうか。いや!良い意味で言ってるんですよ!

しっかり揚げたので、天ぷらの衣がカリカリサクサクなのに、中の具がしんなりしてるのが面白いコントラストだった。

元々ゴボウのかき揚げが大好物なので、この味はとても好きな味。

変わったモノについ心を奪われがちな私は、よく見たこともない食材を買ってきては、調理方法がイマイチよく分からず、腐らせたり悪くしたりして泣く泣く処分する…ということが結構あるのだが、この菊芋はちゃんと最後まで食べ尽くせそうだ。

それから天ぷらという調理法の懐の深さを再発見できた経験だった。


今日の格言 「調理法 困ったときは まず揚げろ」


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