ガレットをつくろう その1 [とろろそばが出来るまで]
皆様、明けましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願いいたします。 |
text by 小川 恭
まだ傷が癒えない
年末に行なったそば打ちで、私は見事に砕け散った。
独りでこっそりと失敗ならまだ良かったが、むやみにお客様まで招いてしまったからたちが悪い。お世話になったお返しのつもりが、すっかりお礼参り(悪い意味の)である。
悪夢の現場
暮れのめちゃくちゃ忙しいときに2時間待たされて、出されたものはカッチカチのそばなんて、極悪非道な嫌がらせとしか思えない。
でも玉置さんは出来た人だ。さすがに殴りかかってはこなかった。口はきいてもらえなくなったけど。いや、それも嘘です。でも申し訳ない気持ちに変わりはない。
ともかく、そんな出来事があって、私はしばらくそば打ちはいいや・・・とそば粉を仕舞い込んでしまったのだった。
だがしかし、そんな風にしてせっかくのそば粉を無駄にしてはもったいない。
まだまだ1.5キロほど手元にある。すっかり離れてしまった心だけど、また少しずつ歩み寄っていけたなら、いつか分かり合える日が・・・ってまるで昼ドラのような言い回しだが、要はリハビリをしようということである。そば打ちの。
ガレットを作ってみよう
真っ向からそば打ちで挑むのではなく、ちょっと違う角度からそば粉のいいところを再発見できればいいんではないかと選んだレシピはそば粉を使ったクレープ、「ガレット」だ。
イメージはこれ
好きでよく買う雑誌があるのだが、ちょうど一年くらい前の記事で、本場のガレットを紹介していて、一回作ってみたいなぁと思っていたのだ。
その本の紹介によると、フランスはブルターニュ地方の名物で、なかでもカンペールという町には美味しい店が多く集まっていて有名なんだそうだ。
同じ「生地を丸く薄く伸ばして焼く」という調理法でも、そば粉で作る甘くないものを「ガレット」と呼び、小麦粉で作る甘いものを「クレープ」と呼んでいる。
そば粉を混ぜて焼くだけなら失敗も少なそうだし、これならイケる!と考え、早速チャレンジしてみた。
材料:そば粉・300g、粗塩・9g、水・750cc、卵・1/3個
本に載っていた量はそば粉を1キロ使うという大胆なものだったが、それはカンペールのお店がいつも作る分量なので、一般の核家族でそんなに作ったら多分ガレットが嫌いになる。
それは困るので、まあこのくらいなら食べきれるだろうという量に減らした。
前回の教訓を生かして、今回はハカリを使ってしっかり計量。
9gの塩なら普段は目分量。だが今回は計量スプーンできっちりと
そこにまず水300ccと卵を加えて、よく混ぜる。
本場では手で混ぜるんですって
ある程度混ざったら、また300ccをすこしづつ加え、空気を含ませるようにして混ぜていく。
混ぜてみると、そば粉と小麦粉がまったくの別物だということを痛感する。
そりゃあ違う植物の実なんだから当然と言えば当然なのだが、実うんぬんというより、粉を構成しているデンプンがまったく違う。見た目はそば粉も小麦粉も大して変わらないのに。
水分を多く含んだそば粉はまるでトロロのようだ。粘りが違う。混ぜると反発がすごい。ぶるん、と手に戻ってくる感触。小麦にはない感触だ。もっちりして気持ちいい。
ひんやりしてモチモチでやめられない
触り心地があまりにいいので、うっかりずーっと混ぜ続けてしまうが、それではいけない。作り方によれば、「生地は練りすぎないように、ねっとりと持ち上げたときに落ちるくらいになったらOK」だそうだ。
混ぜ終わったら、残りの150ccの水を表面に張る。生地が乾かないようにするためだ。
そば粉の生地はこちらで混ぜてやらないと水と一体化しないので、こういう芸当も可能なんである。
混ぜてる途中。加えた水が上に浮いてくる
そして、その生地を最低6時間、出来れば丸1日冷蔵庫で休ませる。
最低6時間。
出来れば、丸1日。
・・・私がちゃんとこの作り方を見直したのは、さあガレットを作ろうとなったその時。
そしてその1時間後には、ガレット目当てに友人が来ることになっていた。
ここが私の悪いところなのだ。楽しそう美味しそう、となるとつい誰かを呼んでしまう。この部分はまったく前回の教訓が生かされていない。
いまさら「ガレット1日寝かさないといけなかったから来ないで」とは言えない。
友人には、「もしかしたらボッソボソのガレットになるかもしれない」とちゃんと自白して、了解を得た。
そして、悪あがきかもしれないが、少しでも寝かせる時間を稼ぐため、包む材料の買い出しにみんなで行くことにしたのだ。ありがとう友よ。
そんなこんなで不完全なガレットではあるが、一体どんな味に仕上がるのだろうか?
長くなってしまったので、次回に続きます。
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