ハゼの焼き干しでお雑煮と甘露煮をつくろう [季節を遊ぼう!ゆる釣り部]

みなさん、釣りは好きですか? 釣りっていうと、いろいろな道具を揃えたり、仕掛け作りが難しかったりと、ちょっと面倒臭い遊びだと思われるかもしれない。実は私もそう思う。一匹でも多く釣るための張りつめた緊張感とかも大の苦手だ。
でも釣りっていうのは、それこそ魚の種類以上に釣り方があり、その中には気を張らないでできる“ゆるい釣り”もたくさんあるのだ。このコラムでは、そんな季節ごとのゆるい釣りとその周辺模様を紹介していきたいと思う。

text by 玉置 豊

ハゼで焼き干しを作ろう

もう2ヶ月も前の話になるのだが、11月に江戸川河口でハゼのボート釣りをしたのを覚えているだろうか。私はすっかり忘れていました。その日は好天に恵まれ、我が人生の中で一番ハゼが釣れた日となり、大家族かペンギンを飼育でもしていなければ消費しきれないような量を持ち帰ることになった訳ですよ。

はい、ここからは回想です。

とりあえず家に帰り、ボート釣りで疲れ切った体に鞭を打って(あくまで比喩)、ウロコと内臓を取り除く。この下処理だけで2時間掛かった。この下処理がとても面倒なので、もうハゼ釣りはするまいと毎回思うのだが、また来年も釣るんだろうなー。


釣るのは楽しい。捌くのは辛い。

下処理をしたハゼは夕飯に天麩羅やら刺身で食べられるだけ食べたところで、余った分をよく水分を拭き取って魚焼きグリルで素焼きにする。ちなみに魚焼きグリルにそのままハゼを乗っけると下に落ちてしまうので、目の細かい金網を敷くといいよ。


量があるとこれが面倒臭いんだ。

この素焼きにしたハゼ、ちょっと醤油をつけて食べるといい酒のつまみになるのだけれどそれは数匹で我慢して、どこのご家庭にも買えばある魚干しネットに入れて風通しのいいベランダで一昼夜干す。はい、これでハゼの焼き干しが完成でーす。


カラッカラに干し上がりました。

このカラッカラになったハゼはお正月まで冷凍庫で保存しておきます。本当はもっと大きいハゼを揃えたかったんだけれど、大きいハゼは全部食べてしまったので、ハゼの焼き干しというよりはなんだか煮干しみたいになってしまったかな。

焼き干しでダシをとろう

焼き干しをつくってから時は予定通りに過ぎゆきお正月に突入。

はい、ここからはお正月のお話です。

冷凍庫の奥の方ですっかり忘れられた存在となっていたハゼをどうにか思い出して取り出し、仙台とか東京の一部ではおなじみであるハゼの焼き干しのお雑煮をつくってみましょう。こういう「味の伝統文化」は守っていかなければいけないよね、とかいいたいところだが埼玉出身の私にはぜんぜん関係のない雑煮だったりする。単にハゼがいっぱい釣れたから作ってみようというだけの話でございます。

ハゼの焼き干しのダシは、いきなり煮立てるのではなくて、干し椎茸と同様にハゼを水にいれて一晩置いてじっくり味を染み出させる。雑煮の具にする野菜は細切りにして外で一晩おいて氷らせるのが仙台流という話を聞いたことがあるのだが、ここ東京だと外に置いておいても氷らなそうなのでそれはやらない。あ、今書きながら気がついたのだが、冷凍庫で氷らせればいいのか。まあ来年の課題ということで。


ハゼの焼き干しを一晩水に浸けておきます。

ハゼの焼き干しの甘露煮もつくろう

焼き干しのハゼは結構な量があるので雑煮のダシだけではあまりそう。そこで正月らしい料理をもう一品ということで、甘露煮を作ることにした。甘露煮もまた作ったことのない料理で、普段買って食べることもない料理である。正月の料理ってそういうのが多いよね。栗きんとんとか。

甘露煮の作り方は私の中でまったくの謎だったのでちょっと検索してみたところ、「四畳半の住人」というサイトに甘露煮の作り方が載っていたのでそちらを参考にさせていただくことにした。載っているのはワカサギの甘露煮なのだけど、まあきっと似たようなものだろう。
※以下、私の独自解釈が入っているので、オリジナルレシピはリンク元を御確認ください。

まずは焦げ付き防止のクッキングペーパーを敷いて、そこにハゼを並べて薄いお茶をタップリと注ぎ、途中でお茶を足しながら弱火で3時間ほど煮込む。なんでもお茶の成分が魚臭さを防いでくれるらしい。ところで料理にクッキングペーパーを使ったのが人生初だぜ。


お茶で煮るんだそうです。

3時間タップリと煮たら、茹で汁をいったん捨てて新しいお水をヒタヒタになるくらい注ぎ、砂糖をワカサギ、じゃなくてハゼの重さの20%分入れて30分煮る。今回はハゼの重さが75グラムだから15グラム。ちなみに計算には電卓を使用した。暗算は苦手だ。砂糖は黒糖しかなかったので黒糖を使ってみる。


黒糖でまずは煮る。「さしすせそ」の「さ」だね。魚の「さ」じゃないよ。

30分後に鍋の蓋をあけて覗いてみると、ほとんど水分が無くなっていた。なるほど、クッキングペーパーを使うと確かに焦げ付きを防止できるね。これは便利だ。


危うく焦がすところでした。

次に、砂糖、みりん、酒、醤油を全部15グラムづつ(覚えやすい分量にしてみました)混ぜたものを加えて、さらに3時間程煮込むのだが、軽く干したワカサギのレシピでカラッカラに干されたハゼではやはり分量が違うようで、すぐに水分が無くなってしまった。そこで焦げ付く前に酒やらみりんやら醤油やら水やらを継ぎ足し継ぎ足ししながらじっくりと煮込んでいく。クッキングペーパーを使っていなかったら大惨事になっていたことだろう。ありがとう、四畳半の住人様。


クッキングペーパーの下はすでに大惨事。

なんだかぼそぼそとした感じで煮上がったところにハチミツを絡める。するとどうだろう。ポマードをたっぷりと塗ったリーゼントヘアーのような照りのある甘露煮に生まれ変わったではないか。ハチミツ、いい仕事してくれるぜ。


ハチミツで照りがでた。

これを鍋のまま冷ましたらハゼの焼き干しの甘露煮の完成。結構な量の砂糖を使ったけれど、食べてみたらぜんぜんくどい甘さではなくて、日本茶にあう素直な甘さとなりました。ちょっと骨が硬いけれど、素朴にうまい一品です。


時間が掛かるけれど、おいしいよ。

ハゼの焼き干しで雑煮を作ろう

甘露煮を作っている間に雑煮用にと水に浸しておいたハゼが戻ったら、そのまま火に掛けて沸騰してから弱火で15分ほど煮込む。ハゼを取りだして味をちょっとみてみると、これがうまい。若干の魚臭さはあるものの、濃厚かつ深みのあるすばらし~いダシがでているのだよ。やるなあハゼ。


ハゼは15分で取り出します。

ハゼから取った出し汁に酒、みりん、醤油、胡椒(好きなので)を好みの量入れて味を調え、冷蔵庫に転がっていた人参を入れて煮る。こっちは甘露煮と違ってレシピの類を一切見なかったので適当だ。人参を煮ている間にお餅を焼いて、最後にベランダのプランターに生えていた空芯菜(今年も芯が空っぽでも生きていけるようにとの願いを込めて)も入れて一煮立ちさせたら雑煮のお汁が完成。お椀に汁を張ってお餅を浮かべ、ダシを取ったハゼを並べる。柚の皮をちょこっと乗っけたらハゼの焼き干し雑煮の完成だ。


ハゼの焼き干しの雑煮、完成でーす。

アツいうちに汁をズズズっとすすって、餅をモフモフといただく。ハゼを釣って捌いて焼いて干して戻して煮てとやたらめったら工程の多いこの料理、食べて納得の味である。鰹や昆布とはまた違ったまろやかなダシのお味で、栄養価は知らないけれどきっと滋養たっぷりという感じがする。これは正月に相応しい手間を掛けただけの価値があるお雑煮だ。今年食べた中で一番の美味しさ。まだレトルトカレーとかインスタントラーメンしか食べていないけれど。

ということで、甘露煮に雑煮と正月らしい素敵な料理をつくることができたのだが、雑煮のダシにしたハゼを甘露煮にすると話が早いかなという気がしたので、来年はそのようにしてみます。忘れていなければ…ですが。


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