“あんま釣り”をやってみよう [季節を遊ぼう!ゆる釣り部]
みなさん、釣りは好きですか? 釣りっていうと、いろいろな道具を揃えたり、仕掛け作りが難しかったりと、ちょっと面倒臭い遊びだと思われるかもしれない。実は私もそう思う。一匹でも多く釣るための張りつめた緊張感とかも大の苦手だ。 |
text by 玉置 豊
“あんま釣り”をやってみよう
前回、あんま釣りの道具やエサについて説明させてもらったが、今回はいよいよ実釣篇。まずはこの釣りの師匠である坂さんにお手本を見せてもらおう。
坂さんは躊躇なくザブザブと川の中に入っていき、水深20センチほどのところで中腰に構えた。そして慣れた手つきで仕掛けを下流に向かって振り込み、竿を寝かせた。そして竿先を水に沈めてた状態で、竿を持つ手をヒョコヒョコと前後に動かした。
この動きがなんだか釣りっぽくない。相撲の差し手争い、いやどちらかというと、自動販売機の下に転がっていってしまった100円玉を棒で拾おうとしている姿に似ている気がする。本当にコレで釣れるのだろうか。
手が前後に怪しく揺れています。
なんで竿を動かしているのかと聞いてみたら、「この前後の動きで魚を誘っているのだ!」とのアクティブな答えが返ってきた。どうやら水中で川虫を目立つように動かすのがこの釣りのポイントらしい。
本当にこんなんで釣れるのかいなと見ていたのだが、坂さんが腕をヒョコヒョコと動かし初めて一分もしないうちにアタリがあり、いとも簡単に手のひらサイズのウグイという魚を釣り上げた。お見事。疑ってゴメンね!
ウグイ。ここではこれがアベレージサイズ。
なるほど、確かにあの動きをすることで、簡単に魚が釣れるらしい。早速私もやってみることにしょう。
川に立ち入って坂さんをマネして竿を前後に動かす。
動かす。
動かす。
動かす。
釣れない。
あれ?
あれ、釣れない…
ウグイくらいならこの釣りが初めての私でも簡単に釣れるものだと思って甘く見ていたのだが、これが全然釣れない。ちょっと離れたところでやっている 坂さんはポンポンと調子よく釣っているのに。やっぱりこういうシンプルな釣りこそ、ポイントの選び方だったり魚の誘い方だったりという「腕」の部分で釣果 に差が出るようで、ちょっと悔しい。
釣れない釣りはつまらない。坂さんに助言をいただき、ポイントを少し深場に移動。さら に「足で石を動かして砂煙を立てると魚が寄ってくる」というアドバイスを受けて実行してみる。普通の渓流釣りでは、足音や水音を立てたりすると魚が逃げ るっていうけれど、血煙でピラニアを呼び寄せるが如く、砂煙でウグイを呼び寄せるのだ。
ザブザブと砂煙を上げる。すね毛が気持ち悪いですね。
砂煙の中をエサが漂うように流していると、クンクンっと小気味よく竿先が引っ張られた。ようやく一匹目がかかった! 魚のヒキを楽しみながら軽く竿を立ててキャッチしたのは、アブラハヤという小さい魚。こんな小さい魚だけれど、仕掛けがシンプルなだけに、アタリやヒキが ダイレクトに伝わってきて、予想していた以上にとても楽しいのだ。
ようやく一匹目が釣れた。
釣りっていうのは、最初の一匹を釣ることが目的の80パーセントくらいで、一匹釣った後はオマケみたいなものだと思う。この“一匹目”というやつが堪らなく愛おしい。
一匹釣って感じを掴めたら、あとは簡単だった。坂さんみたいにポンポンポンとリズミカルにはいかないけれど、ポン(休んで休んで)ポン(休んで休んで)ポンと、幼稚園児のカスタネットくらいには釣れた。ってたとえがわかりにくいか。
ここは一応アユやヤマメも棲んでいる川なので、もしかしたら予想外の大物が釣れるかも知れないと期待をしながら、ニヤニヤと釣りを続ける。釣りっていうのは、テレビゲームなんかと違って、何がおこるか誰にも予測不能なところが楽しいのだ。
これは坂さんが釣ったオイカワという魚。
あんま釣り、楽しい。魚を釣り上げる瞬間に、結構針が外れちゃったりするのだけれど、逃げられたところでウグイやアブラハヤなどの普通の人は食べないよう な雑魚なので、ぜんぜん惜しくないところがいい。これがアユやイワナだったら大騒ぎである。坂さんが「この時期、一番ゆるい釣り!」と自信満々にいってい た意味がわかった気がする。
とはいえ、ゆるい釣りではあるのだが、普段一切の運動をしないこの身にとって、流れのある川に 立ちっぱなしで竿を動かし続けるって結構な重労働だったりもする。腰が痛い。“あんま釣り”というのは、この竿を動かす様子が、按摩師(あんまし=マッ サージ屋さん)がマッサージをするところに似ているからとか、目の不自由な按摩師が杖をつく様子に似ているからといわれているらしい。しかしこれからは、 釣りの後にマッサージを受けたくなるくらい疲れるから“あんま釣り”というのだという、ニセの由来を流布していきたいと思う。
ある程度の魚を釣って、そろそろ一休みしようかなと思ったとき、坂さんが車に戻ってあるものを持ってきた。そ、それは…
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