江戸川のボートハゼ釣り その1 [季節を遊ぼう!ゆる釣り部]

みなさん、釣りは好きですか? 釣りっていうと、いろいろな道具を揃えたり、仕掛け作りが難しかったりと、ちょっと面倒臭い遊びだと思われるかもしれない。実は私もそう思う。一匹でも多く釣るための張りつめた緊張感とかも大の苦手だ。
でも釣りっていうのは、それこそ魚の種類以上に釣り方があり、その中には気を張らないでできる“ゆるい釣り”もたくさんあるのだ。このコラムでは、そんな季節ごとのゆるい釣りとその周辺模様を紹介していきたいと思う。

text by 玉置 豊

江戸川放水路へハゼ釣りに行こう

前回、千葉県の富津岬へイイダコという頭のサイズがピンポン球くらいの小さなタコを釣りにいってきたのだが、その日に限って潮がまったく流れずに大苦戦。結果、潮のいい日だったら100匹オーバーを狙えるイイダコなのに、私が4匹、同行者が10匹という情けない釣果に終わってしまった。まあ楽しかったし美味しかったので、それはそれでいいのだが。

しかし、やっぱり悔しい。そういえばその前のハゼ釣りも同じようにショボい釣果だった気がする。釣りの楽しみっていうのは釣った魚の数や大きさだけじゃないとは思うのだが、夕飯のオカズにも物足りないようではダメである。ダメダメである。そりゃもうダメである。

ここはひとつ、確実に釣れる魚を釣ってやろうと思い立ち、本屋で買ってきた釣り情報誌3冊を読破した末に選んだのが、江戸川放水路でのハゼ釣りだ。悩みに悩んで、またハゼだ。でも今度は陸っぱりからではなくて、手漕ぎボートに乗ってのハゼ釣りなのである。

目指すハゼ釣りのボート乗り場は東西線の妙典駅から江戸川に向かって歩くこと徒歩10分。釣りっていうのは車がないといけないような場所でやることが多いのだけれど、ここは気軽に電車でいけるのが助かる。さあ、今度こそ目指せ100匹!


朝焼けのホーム。

東西線から見える目的地。ここで降りたい。


ボート屋で猫のお出迎え

妙典駅のコンビニで食べ物飲み物を買い込んで江戸川の川原へ。川原沿いにはハゼ釣りの貸しボート屋が間を開けずに並んでおり、だいたいどこも同じ値段である。なのでどこでボートを借りてもいいのだが、今回はとても強烈な客引きにつかまり、伊藤遊船というボート屋にすることにした。


伊藤遊船に決めました。

私を伊藤遊船に連れていった強烈な客引きが、彼らである。


ニャーニャー

ムニャムニャ


猫である。

しかもまだ大人になっていない、さわり放題の人なつっこい子猫である。

こんなかわいい猫達が何匹もボート屋の入り口前でウロウロしていたら、猫につい心を開きがちの人間としては他のボート屋は選択肢にない。もう釣りはやめてずーっとここで猫と遊んでいたいくらいである。そんな客は迷惑なだけなのだが。

桟橋から船に乗る

受付で乗船料を支払い、ついでにエサを1パック購入。ライフジャケットは無料で貸してくれる。店の奥にある桟橋をズンズン歩いていくと、先客がすでに数人並んでいた。夏場、ハゼが水深の浅い場所で釣れる時期は、ここからボートに乗ってこの近くで釣りをするのだが、この時期は少し深場に移動している。そこで、この桟橋から送迎用の船に乗って河口までいき、そこで手漕ぎボートに乗り換えるシステムなのだ。電車の乗り換えだったらさっきしたばっかりだが、船の乗り換えっていうのはなかなか珍しい。


桟橋。夏場はこの辺で釣れるよ。

しばし送迎の船を待つ。


本日のゲスト紹介

送迎のボートを待っている間に本日のゲストを紹介。今回のゲストは初の女性、このコラムを読んで「私も釣りに行きたい!」とメールしてきた友人で、さっきからお腹がへったとムシャムシャおにぎりを食べているエドガー・カコー(仮名)さんだ。

このエドガーさんは「釣りには何回もいったことがあるけれど、仕掛けは一切作れません!」という微妙な経歴の持ち主。ハゼ釣りは子供の頃に父親と岸からやった以来だそうで、ボートでハゼを狙うのはもちろん初めてとのこと。

今日の大漁を約束するような輝かしい朝日をバックに送迎の船がやってきた。


おにぎり食べているのがエドガーさん。

送迎の船に乗り込みます。


送迎用ボートで河口まで移動

荷物を持って送迎用ボートに乗り込み、少し冷たい風を感じながら沖へと移動。さっき電車で通ってきた東西線、水道管の下を通り抜けていく。普通に道路を歩いていると見られないような景色が楽しい。

国道357号線と首都高速湾岸線が走る市川大橋の手前で船は停止。ここに浮かんでいる無人の手漕ぎボートに乗り換えて、あとは自分でオールを漕いで好きな場所に移動する。ここから先は自分が船長だ。


ガタンゴトン東西線。

これは水道管だそうです。


ポイントを選ぼう

イイダコみたいな乗合船だと、船長が経験や魚探を頼りに一番釣れると思われるポイントに釣れていってくれるので、乗客は釣りに集中すればいいのだが、手漕ぎボートでの釣りは手前船頭。自分でポイントを選ばなければいけない。釣れない責任はすべて自分の釣りなのだ。とはいっても広い河口のどこで釣ればいいのかなんてわからないので、エドガーさんに決めてもらうことにした。釣れなかったらエドガーさんのせいということで。

「どうせなら海に近い方が大きい魚が釣れる気がする!」という根拠があるんだかないんだかわからない意見を元に、海に向かって船を漕いでしばらく、エドガーさんより「ここがいい!」という迷いのない指示をいただいた。


ボートを漕ぐのはものすごいヘタです。まぶしい。

エドガーさんが指定した場所は、JR京葉線の真下だった。なるほど、橋の下は障害物などが多くて好ポイントになっている場合が多いと聞いたことがある。もちろんそんなことはエドガーさんの知ったことではなく、ここにした理由は「橋の下だと日焼けしなそうだから!」というものだった。

日焼け止めをバッチリと塗った上に日除け付き帽子をかぶって、さらにマスクまでしているというのに、それでも太陽を恐れるか。今の時間は太陽の位置が低いからここは全然日陰にならないよと教えてしまうとまたエッチラオッチラとボートを漕がないといけなくなるので、真実はそっと胸の内にしまい込み、とりあえずここでやってみましょうかとアンカーを降ろした。


見上げれば京葉線。影はだいぶ斜めだ。

アンカーを入れてボートを固定。


仕掛けのセットは簡単

今日のハゼ釣りは釣り場の水深がよくわからなかったので、延べ竿ではなくリール竿を持ってきた。天秤の下に3号くらいの軽いオモリをぶら下げ、針は伊藤遊船特製の二本針。道糸と天秤を繋ぐ以外は、ぶら下げたり引っかけたりすればいいだけなので、エドガーさんでも問題なし。今時はほとんどの対象魚に合わせた市販の専用仕掛けが売っているので、簡単にセッティングができるのだ。


天秤、オモリ、仕掛けがあればOK。

セッティングはこんな感じ。


もちろん一口にハゼ釣りといっても仕掛けはいろいろあって、なにが正しいというのはない。本当はいろいろな仕掛けを自作するのも楽しいんだけれど、以前アジを釣りにいった際、わざわざ自分で針と糸を結んで作った仕掛けよりも市販の仕掛けの方が全然釣れたことがあり、それ以来自分が作った仕掛けを信用していない。

問題はエサだ

仕掛けのセッティングはまあいいとして、女性にとっての問題はエサである。ハゼ釣りのエサはアオイソメというニョロニョロした生き物で、目が覚めてこいつが顔の上を這っていたら確実に「キャー!」と声を上げてしまうようなヤツである。これがまたよく動くんだ。ハゼを釣るときはこのアオイソメをハサミで小さく切って針に付けるのだが、ちょっと女性にはキツいかもしれない。男性でもダメなひとは多いだろう。はてさて、エドガーさんは大丈夫だろうか。


アオイソメ。1パック500円也

こんな風につけます。


しかしそんな心配は杞憂だったようで、エドガーさんにハサミで切ったアオイソメをそっと差し出すと、躊躇無く素手でアオイソメをつまみ上げて針に付けている。力強い。

なんでも「仕掛けは作れないけれどエサはつけられる!」そうで、釣りをはじめた当初はいろいろと抵抗があったらしいのだが、釣りに連れてきてくれた人に迷惑を掛けたくないという一心で、その壁を突破したそうだ。エビや魚の切り身など抵抗のないエサを使う釣りをやるとか、ルアー釣りをするとかいう選択をするのではなく、アオイソメと正面から対峙したところがえらい。


えらい。

さあ、仕掛けもエサも準備したところでハゼ釣りの開始だ。めざせ今度こそ100匹!


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