そばを収穫しよう 後編 [とろろそばが出来るまで]

ついに待ちわびたそばの収穫の日がやって参りました。1ヶ月ぶりの対面となるそば畑はいったいどんな風に様変わりしているのでしょうか?案内状に記された「ガーコン」なるものの正体は…?そばを収穫するまでを2回に分けてお届けします。今回はその後編です。

text by 小川 恭

スイッチ入りました

そば収穫の能力において、完全に地元の人と化した玉置さんを目の前にして私の闘争心に火がついた。


超本気

鎌は小さいながらもだんだん要領を得てきた。手首にスナップを効かせてシュッシュッと切るようにすると、根っこが付いてくることもなく、上手く刈れることがわかった。

額から汗が流れる。いくらやる気になっても、急斜面に腰をかがめ、這いつくばるようにして行う収穫は楽なものではない。

隣の畑から、その持ち主のご夫婦の会話が聞こえてきた。

夫「…お金払ってそば打ちだけやるって方がよかったんじゃないか」

・・・ああ!言っちゃった!多分ここにいる誰もが、その言葉を飲み込んできたのに。

妻「何言ってるの!こうやって畑仕事するのがいいんでしょ!手作りってことに意味があるんじゃない!」

すかさずそのぼやきを打ち返した奥様。さすがである。
その言葉に背中を押されて、さらに懸命に鎌をふるった。

きづけば

はたとあたりを見回してみると、もう私の畑の一画は、ほとんど刈り取り終わっていた。
その速さに自分たちでびっくりである。同じ作業人数2人で、ほぼ同時に始めた件のご夫婦のところは、まだ半分ほどだ。驚異的なハイペースで収穫を終えてしまった。


おもわず刈り終えた畑に雄叫びあげてダッシュ


収穫したのは、これと

あれ


こんもりと積まれた収穫の成果を写真におさめようとしたら、「これ脱穀の方に持ってっちゃっていいかしら?はいごめんなさいね」と担がれて持って行かれてしまった。

そうである。収穫が終わったといって浮かれていてはいけない。まだ脱穀というプロセスが残っているのだ。

脱穀をしよう


ここが脱穀コーナー

脱穀は、広場のブルーシートの上で行う。ビール箱のようなものをひっくり返し、その上でそばの枝をバシバシとはたき、実を落とすのだ。箱に穴が開いているので、そこから下に落ちる寸法だ。


これが…


ばっしんばっしん


…で、こうなる

これがかなり強くはたき落とさないと実が全部落ちきらない。最初自分では相当の激しさでやっているつもりだったのだが「あーそれじゃ実が全然残ってるな」とダメ出しされてしまった。


インチキ占い師のように枝をチェックする

これも簡単なように見えて結構大変だった。というのも、


もういっちょ来たよ

…あとからあとから刈り取られたそばが運び込まれてくるのである。
私はてっきり自分の畑の分をやったらおしまいかと思っていたら、全員で全体の分をやる共同作業らしい。後ろにそばがどんどん積まれていく。

「これ、果てしないね・・・」

玉置さんがぼそりとつぶやいた。

悪い夢のようにそばの山に囲まれていく。
全部手作業で行っていてはまさにネバーエンディングである。

そこで出てくるのが、この「ガーコン」である。


リーサルウェポン

ガーコンとは足踏み式の脱穀機である。本体に棘のように針金が出ていて、ペダルを踏むと、この本体が回転する。そこにそばの枝を押しつけると実が弾かれて落ちる仕組みだ。足で踏むときに「ガーコン、ガーコン」と音がするのでガーコンと呼ばれるようになったという。

上手い人が足踏み担当になると、ものすごい速さで回転するのでちょっと近づくのも恐いほどである。

さっそく頼んで、私もやらせていただいた。


ぐるぐる回ったら枝乗せればいいんですよね


・・・ああ!!

チャレンジ早々、回るガーコンにそばの枝を束ごと持って行かれてしまった。
握りが甘かったらしい。まわりの皆さんの失笑を買う。ガーコンの引っ張る力は半端ではない。

仕組みは簡単なものだが、その威力はなかなかすごい。ガーコンの上を2、3度滑らせると、枝の実は綺麗に取れてしまう。

みんなで結束して作業すること1時間弱。脱穀が完了した。


脱穀した実をブルーシートの真ん中にあつめて

ふるいにかけて大きなゴミを取る




それを袋につめて

そばの収穫完了!!


果てしなく思えた作業も、予定時間より大幅に早く完了した。
さきほどまで大きく広がっていた畑がこの袋の中に収まってしまったのかと思うと不思議な気がする。

このそばの実を、次回のそば打ちまでに地元の方が乾燥させ、挽いてそば粉にして準備しておいてくれるそうだ。ありがたい。

そばの収穫も滞りなく完了し、あとはそば打ちの日を待つだけである。


収穫の重みを味わいながら袋を抱く


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