そばを収穫しよう 前編 [とろろそばが出来るまで]

ついに待ちわびたそばの収穫の日がやって参りました。1ヶ月ぶりの対面となるそば畑はいったいどんな風に様変わりしているのでしょうか?案内状に記された「ガーコン」なるものの正体は…?そばを収穫するまでを2回に分けてお届けします。まずはその前編です。

text by 小川 恭

プロローグ

前回の刀削麺の一件で、すっかりそばづくりへのやる気が回復した頃、1通の手紙が舞い込んだ。

「そばの収穫」のお知らせである。

前回のお花見から1ヶ月、いよいよそばの実を収穫する時を迎えたのだ。

届いた案内状には畑のそばを収穫し、「ガーコン」という道具を使って脱穀するまでを行ないます、収穫はなかなか作業量が多いので人手が多い方が良いでしょう、というようなことが書いてあった。

とはいえ、一区画がそんなに大きいというほどでもないので、私含め3人くらいでちょうどよかろうと、家の近い知人ふたりに声をかけ、必要なグッズを買い、万全の準備でその日を待った。

天気予報も下り坂の予報から一変、関東地方の快晴を伝えている。

きっと里山の秋は木々も美しく色づいて、空は高く、その中での農作業は日頃のストレスを解消してくれるだろう。期待に胸を膨らませて、その前日、私は眠りについたのである。

ところがどっこい

そば収穫当日。

そば畑にいたのは、


またお会いしましたね

前回私を罠にはめ…いやいや素晴らしい経験にいざなってくれた玉置さんただ一人だった。

というのも、一緒に来る予定だったもう一名は、急な仕事と体調不良のダブルコンボをもろにくらってしまい、当日の朝6時過ぎに急遽キャンセルになってしまったのだ。

あいにくにも他の近所の友人は、大体が夜型人間のため、その時間に連絡のつくような人はいない。もし電話したところで、寝入りばなをたたき起こされて最高に不機嫌な状態か、まったく電話に気付かないかのどっちかだろう。

私は諦めて、当初の予定のまま、玉置さんと2人でそば畑にやってきたのである。
実は玉置さんとは自宅からの最寄り駅が2つしか違わない、ご近所さんなのだ。

そば畑に着き、私が受付を済ませて戻ってくると、玉置さんは写真のような姿になっていた。

「玉置さんやる気ですね」

「汚れちゃうから」

「それ、長靴持ってきたんですか?」

「いや、最初から」

…来る途中のパーキングで足もとを見て、動きやすそうなスニーカーだなぁと思ったのは長靴だったらしい。ズボンが上にかぶっていたので気付かなかった。スタイリッシュにボトムスをブーツインにしてすっかりアグリカルチャーモードである。

私も早速持ってきたグッズを広げて作業の準備に入った。


案内状に書いてあった「持参する物」

軍手と鎌。そばを刈り取るために必須のアイテムである。鎌は貸出用もあるが、出来れば持ってきてほしいと書いてあったので、近所のスーパーの園芸コーナーで買ってきた。

新品の鎌を取り出して、いそいそと準備をしていると、玉置さんがつぶやいた。

「それ、ちっちゃくない?」


ちんまり

当然左のが私の持ってきたやつなのだが、言われてみると、私の鎌はままごと道具かと思うほど小さい。何事にも詰めが甘い性格が思いきり出た。

「俺、こっち使お」

玉置さんは迷わず貸出用の鎌を選んだ。
ひどい。


こんな感じで貸出用は置いてありました

それでは刈り取り開始

受付で「今日の収穫ってどうやってやるんですか?」と聞くと、

「とりあえずそばを刈り取って、レジャーシートにまとめてください。それを脱穀するんですが…そのときはまた聞いてください」

と、とても簡潔に説明されたので、早速刈り取りを始める。

が、その前に自分の畑の広さを確認だ。


お久しぶりのマイ畑



白い花畑のようだった姿はすっかり変わり、今度は茶色い実を鈴のようにぶら下げている。


緑から赤、そして茶色へと変化する

こう見ると結構広い


イメージとしてはそんなに広いと思わなかったのだが、実際区画割りされている部分を確認すると結構ある。しかも斜面が急である。

これを2人で全部刈り取るのか…

正直「これはしんどいぞ…」と暗い気持ちになった。しかしそうとばかりも言っていられない。とにかく体を動かすのみだ。


私は上の方をやりますですよ

うげー。根っこが取れた


いかんせんミニ鎌を使っているので(意地で持参品を使った)なかなか切れない。ぐいっと引っ張ると根っこまで付いてきてしまう。
近くで地元の人が「土は付けないようにしてくださーい。脱穀したときに石が混ざっちゃいますから」とアドバイスをくれる。


でも付いてきちゃうんだよね

慣れない作業ということもあり、テンポ良く進まない。

意外な戦力

刈り取ってはレジャーシートの上にまとめる、というのをちまちまやりながら、ふと見ると、


地元の人ですか?

…速い!!

びっくりするほど玉置さんの作業が進んでいるのだ。
大きな鎌が功を奏しているのか分からないが、さすが長靴まで用意するだけある。

いかん、畑の持ち主である私が負けてはいられない。

私の中の変な闘争心に火がついた。

玉置さんの意外な一面を見つけたところで、後編に続きます。


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