そばのお花見を楽しもう その3 [とろろそばが出来るまで]
生まれてから27年間、ずーっと東京で暮らしている。特に不便を感じたことはないが、たまに自然にどっぷり浸かりたくなる。そういえば、自然を見ることはあっても自然にダイレクトに触ることってないんじゃないか?土に触れたり、生きものに触れたり。そうだ、あわよくば収穫の喜びなんて味わってみたいな。そんな願いを叶えてくれる、うってつけのシステムがあるというのでやってみました。 |
text by 小川 恭
初イノシシ
今回のお花見に参加するに当たって、事前の情報として自分の足で現地に赴いたことともうひとつ。
甘楽町役場の皆さんが運営している蕎麦の里のホームページにある「蕎麦づくり日記 2006」を参照させていただいていた。(この日記は2007年版も作成されていて、なかなか現地に行けない人でも畑の状況が分かるようになっている。これはありがたいですよ)
この日記に目を通して、どのイベントでどんなことをするのか、ざっと頭に入れていたのだが、その中で、「なにっ!」と心つかまれたのが、お花見の際に振る舞われたという「しし鍋」であった。
我が家の近所にはイノシシや鹿、熊などの獣料理の店があり、ある時期になると店の軒先に「猟解禁!!」と書かれた看板とともにでかいイノシシが吊されていて、夜、脇を通り過ぎるたびにギョッとしてはいたが、実際に口にしたことはいまだかつて無かった。
お店で食べるとなるとなかなかお高いものだし、早々お目にかかれるものではない。
その価値感覚は同行者たちも同じだったようで、「群馬の蕎麦畑でお花見しながらしし鍋食べられるらしいよ」というアナウンスで飛びついてきたわけである。(まぁそれで先走りすぎて前々回のような勘違いもあったわけだが)
そして今。
ぐっつぐっつ目の前で地獄の釜のように煮えているあの中に噂のしし鍋がいる。
見てるこっちは気もそぞろ
このしし鍋は、受付時に配られた軽食引換券でいただける。
しかし、ここにひとつ問題があった。
今回私を含め4人で参加したのだが、もともと3人の参加予定人数で申告していたため、引換券が3枚しかなかったのだ。
急遽の人数変更だったので(確定したのが前日)これは仕方ない。
しし鍋は販売もしているとのことだったので、ひとつ買えばいいじゃないかと話はまとまった。
そうは言いつつも東京での獣料理の金額(あくまでイメージ上)が脳裏をかすめる。
なんだかんだ言ってこれで高かったらどうしよう…
おそるおそる値札を見てみると…
あれ?
ししなべ ごじゅうえん。
ここまでかくーんと気が抜けたのは久しぶりだったかもしれない。
じゃあ東京のあの値段はなんなんだよ…
と腹の内で悪態をつきつつも、まあ良かった良かった。
ほかにもいろいろありました
みんなに配られるしし鍋・お赤飯の他に、地元のご婦人たちが作って販売しているお総菜もあった。
値段も安いし、試食もあり、売り場はとてもにぎわっている。
あの水色のかっぽう着のご婦人はしし鍋も配ってた。八面六臂の活躍。
売り場は大繁盛
煮物やとうもろこしのかりんとう、草餅や中に具の詰まったやきもちなど郷土色あふれるラインナップ。
試食をちょっとつまませていただくと、すごく美味しかった。
販売にあたっていたのは二人のご婦人だったのだが、どうもそれぞれが自分の家庭の味で作って持ち寄る形式らしく、「同じ煮物に見えるけどね、こっちとそっちじゃ全然味が違うから!」「そっちの食べたの?こっちも食べてみな!」とステレオで迫られる。
なんだ敵対関係か?とハラハラしたが、そのあと二人は何事もなかったように談笑していた。
つまりそれだけ自分のところの味にプライドを持っているということでしょう。
そういうちょっとしたことでも気持ちにはりが出るものだし、いいことだ。
お二人に敬意を表して、それぞれから一品ずつ購入した。
さぁ食べよう
仕入れた食べ物を片手にその辺をうろうろ。みんな手頃な場所を見つけてはシートをひろげてくつろいでいる。やっと私たちもその仲間入りだ。
色合いはとても地味
…茶色っぽい品揃えに加えて黄色いレジャーシートが抜群の地味さを醸し出している。蕎麦の花の白と、周りの緑に映えるように黄色を選んできたのだが、それがびっくりするほど裏目に出た。
とはいえ色気より食い気
50円とは思えない具沢山っぷりのしし鍋
しし鍋は里芋、しいたけ、人参、ゴボウなど大きく切った野菜が盛りだくさんで、肉も思ってたよりしっかり入っているし、臭みなんて全くなくとても美味しかった。ちょっと普通のお肉より噛みごたえがしっかりしてるかな、という感じだ。特にこの日は寒かったので、あたたかいしし鍋は、何よりお腹に染み渡った。
これが噂のイノシシ肉ですよ!
外でみんなとお弁当を食べるのはやっぱり気持ちいいなぁ。
うっかりシートを敷く場所を、ごつごつの砂利の、しかもゆるーい坂の上にしてしまい、気を抜くと下まで滑り落ちそうになりながらも、ひさびさのこの感じは楽しかった。
それから用意していただいたビンゴゲームに興じ(これといった賞品は当たらず)すっかりお腹も心も満たされて、私たちは帰路についたのである。
次の収穫の日を楽しみにしながら。
…あんたあたしのことちゃんと見たの?
あ、忘れてた。
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